久保:
皆さんこんにちは、この番組はDMMチャットブーストを利用していただいている会社に訪れた「ブーストタイム」に着目し、会社がどう困難を乗り切ってきたかを紐解いていく番組です
水田:
よろしくお願いします
久保:
初めに簡単に会社の紹介をお願いします
水田:
encycloは化粧品のポーラやオルビスのグループ会社なんですけれども、女性の悩みでとても多いむくみをケアする「MAEE」というブランドを展開しています
もともと私も当事者なんですけれども、リンパ浮腫というむくみ疾患の方が使う医療用ストッキングからスタートしています
久保:
私もむくみを気にする女性の一人なので関心があります
①リンパ浮腫の発症
水田:
私は昔癌を患ったことがあるんですけれども、その治療の後遺症としてリンパ浮腫が発症したんです
それが私の起業のきっかけになります
久保:
癌自体の治療がうまくいっても中には後遺症が残るケースもあるんですね
水田:
またリンパ浮腫は一生治らないっていう特徴がありまして、私の場合は下半身がむくみやすいという症状なんですけれども、ケアをしておかないとすごくむくんでしまうんですね
久保:
ケア方法としてはどのようなものがあるんですか
水田:
下半身がむくまないように常に分厚いストッキングを履いて圧迫することがメインのケアになります
私は自分が発症するまでこういう病気があること自体知らなかったので、最初はそんなストッキングをずっと履かないといけないということにかなりショックを受けましたね
治療用のストッキングってすごく分厚くて見た目が不自然なんです
夏にはつけ心地が不快ですし、そもそも硬くて履くのがすごく大変なんです
久保:
既存のケア方法は生活になじみにくいものだったんですね
水田:
そうですね、分厚いストッキングを常に履くことは外に出かけて仕事をするとか友達とおしゃれをして遊んだりするとか、そういった普段の生活にはフィットしないなってずっと思ってました
久保:
この経験が後の会社設立に大きなきっかけとなっているんですね
水田さんにとってその経験は起業にどう活きていたんですか
水田:
どんなビジネスでも顧客の心理とかインサイトを理解することはすごく重要ですけれども、私の場合病気の当事者になったことから不便さとか困りごととか、いわゆるペインと言われるものをとても深く体験しました
インサイトに深く刺す事業を始める際に自分が当事者であったっていうのは非常にプラスに働いたと思っています
久保:
当事者視点を持つことが本当の意味でのインサイトの理解につながるんですね
②超空白市場の発見
水田:
会社の先輩や同じ病気の仲間に後遺症の悩みを話したことがきっかけで超空白市場を発見することができたんです
実はリンパ浮腫が発症してからは何年もモヤモヤした期間が続いてたんですね
徐々に同じ病気の仲間ができて話すようになって、仲間がいる心強さで孤独が解消されたり、みんなこんなにおしゃれなのに病気になった途端ファッションの我慢を強いられることに驚きを受けました
そんな中、あるタイミングでその後遺症の悩みを会社の先輩にも話してみたんですね
そしたら意外とすんなりと受け止めてくれて、この悩みを解決することが事業のプランになるんじゃないかという話になって、その先輩と新規事業コンテストに応募してみることになりました
久保:
具体的にはどのようなアイデアで新規事業コンテストに出場されたんですか
水田:
基本的には私と同じような悩みを抱えている人たちに向けたプロダクトの開発です
私はもともと化粧品の商品開発を10年くらいやっていて、例えば化粧品市場ってすごく飽和状態なんですね
ありとあらゆるものはすでにもう存在していて、ほんのちょっとの違いをアピールしてお客様に振り向いてもらおうみたいな状態なんです
久保:
確かに今の時代ほとんどの市場プロダクトは飽和状態にありますよね
水田:
そうなんです、ただ私自身事業計画を作るのは初めてで、病気を経験した方向けの一定の規模の市場があるっていうのは肌感覚では分かっていたんですけれども、経営者の方が納得できるようなロジカルな
形で説明するのがすごく難しかったんです
久保:
確かに説明するのが難しそうなジャンルですよね
水田:
属性とか年代とかの切り口でのマーケティングデータは世の中にたくさんあるんですけれども、病気を経験した方が切り口のデータはなかなか得るのが難しくて、根拠としてロジカルに示すのにとても苦戦しました
最終的には熱意で事業化を承認していただいたような形になりました
久保:
データがないイコールニーズがないというわけではないですもんね
水田:
そうですね、今まで生活者に対して提供するものってニーズとかウォンツとか、数年前だとジョブとかの言葉を使っていたんですけれども、それ以前の当たり前すぎてないことにすら気づかない、見過ごされてることがまだまだあると思うんですよね、それもとてもエッセンシャルな領域で。
久保:
そのエッセンシャルな領域というのが病気や健康ということでしょうか
水田:
はい、今は時代の変化の真っ只中にいると思うんですね
かつては病気になることは緊急事態だから医療のことは病院の中で扱われて、社会生活は健康であることが前提だったと思いますけれど、コロナ禍の影響もあって医療や健康の情報って日常にどんどん溶け込んできています
ニュースとかバラエティ番組とかSNSでも当たり前に医療関連の情報が溢れていると思います
最近様々な病気でも入院期間を極力短く生活しながら治療するっていう流れにあるんです
さらに高齢化が進んでご年配の方が社会の中に当たり前にいるっていう状態が普通になってきています
健康と病気ってパキッと分かれるものじゃなくて、日々の予防があったりしながら生活したり治った後も気をつけることがあったり、境目のないグラデーションなんだっていう感覚が芽生えてるんじゃないかなと思います
そうすると健康ケアするアイテムも普段のライフスタイルに溶け込む素敵なものが当たり前にあって欲しいんですよね
それはとてもエッセンシャルだけれども未開拓の分野だと思っています
久保:
今まで少数派と思って見過ごしていたところに実は大きなマーケットがあったということですね
水田:
そうなんです、そういった空白のマーケットを発掘して深く刺さるプロダクトを届けることでどこまで大きく広げていけるのか、そこにチャレンジしているのが私たちのブランディングでもありマーケティングでもあると思っています
久保:
なぜ今まではそのようなサービスやプロダクトが生まれてこなかったんでしょうか
水田:
人生100年時代っていう言葉がすっかり定着しましたけどサービスやプロダクトにおいてはまだまだ過渡期なんじゃないかなと思います
病気を持つ方とかお年寄りとかをこれまではこのマーケットの端っこという風に捉えていたかもしれないんですけれども、これからは違うと思っています
人類が初めて体験する100年っていう時間軸を踏まえた商品やサービスがどんどん生まれている最中なんだと思います
久保:
マーケターも捉え方を変えていく必要がありますね
水田:
そうですね、ものづくりとかマーケティングも価値観のアップデートが重要だと思います
情報にも物にもとてもアクセスしやすい時代なので、生活者の方は自分にピッタリくるものを探して取り入れたいと考えるようになっていると思います
そうした流れを「MAEE」では大切にしていますね
③ブランディングの重要性
久保:
水田さんは患者さん向けのストッキング開発の際にどのようなことに気をつけられたんでしょうか
水田:
ケア用品にもビューティーの発想を持ち込むということですね
私が着目したのは使う方の気持ちの面なんです
医療用ストッキングって生涯使うものなんですけど、治療効果は高くても使いやすさとか見た目が置き去りになっていたんですね
そのおかげで実際に使う立場だとちょっと出かけるのはやめておこうかなとかおしゃれな友達にはちょっと会いたくないなぁなんて気持ちや行動が消極的になってしまうことを自分自身が体験してたんです
病気になったからって言って身につけるものの好みがガラッと変わるわけじゃないじゃないですか
そこでリンパ浮腫になる前に身につけていたものと同じような見た目、デザインだけれどもしっかり治療効果があるものを作ろうと思いました
久保:
なるほど、今までの医療用ストッキングの機能的なイメージからそこにビューティーさを加えていこうと考えられたんですね
水田:
そのビューティーの観点を持ち込んだことで患者さんが治療に前向きになったっていう声を医療関係者の方からもいただいたのでとても手応えを感じました
久保:
MAEEのブランドはターゲット層が患者の枠を超えて、一般女性にもあてられているということなんですが、こちらもブランディング施策の一環なんですか
水田:
そうですね、これはブランディングというよりはリブランディングの話になるんですが、一部の人に向けて作った商品が広く一般の方にも役立つことに気付いたんです
というのも事業を進めていく中で展示会に出展する機会があって、その際に一般の女性の方からもすごく大きな反響があったんですね
そこにヒントを得まして、改めて自社でも調査をしたらすごく驚くほど多くの女性が、しかも年代も問わずむくみに関連した体の不調を感じていたということがわかりました
医学監修の先生とも相談をして機能と美しさ両方に気を配ったMAEEのストッキングを身につけていただくことで、女性の不調解消のお手伝いができるんじゃないかということに気づきました
久保:
なるほど、医療用ストッキング=患者のものというイメージを変えようとしたんですね
リブランディングをしていく上で具体的にはどのようなことをされていたんですか
水田:
改めて一般の方の見込み対策を調査してみるといろんな誤解があるっていうことが分かってきました
例えば自己流の強いマッサージを一生懸命していたり、むくみは寝るときにケアするみたいな思い込みがあったり、今までもリンパ浮腫の方に向けてオウンドメディアで情報発信をしてきたんですけれども、一般のむくみ悩みの方に向けた誤解を解くような情報発信もしていこうと準備を進めています
ブランド名がMAEEと言うんですけれども、これはまさに前へ進むっていう意味なんですね
ヘルスケアのブランドだとなんか優しいムードとかいたわりのカラーが強いものが多いんですけれども、MAEEはブランドと接することで気持ちや行動が前へ進むきっかけになりたいと思ってるんです
そういった明るさとか全身を応援するトーンとマナーっていうのは意識しています
生活とかライフスタイルはすごく大事にしていて、どこか専門的な医療機関に通うとかではなくて、生活の一部としてさりげなく取り入れられるようなブランドを意識しています
久保:
確かに医療器具とかのサイトはもっと暗いイメージがあります
このサイトは心が自然と前向きになるデザインですね
④DMMチャットブーストを導入したきっかけ
久保:
このタイミングでチャットブーストも導入されたんですよね
水田:
そうですね、今話した経緯もあってもっと幅広い人にでも個別的に人肌感を持ってコミュニケーションを取りながら会社を拡大させたい思いがあって、これまではユーザーインタビューはアナログにワンツーワンで行ってきたんですけれども、それだと時間がすごくかかってしまうので個別感を保ちつつ効率化も考えると公式LINEの活用がすごく大事だなと思ったんです
そこでチャットブーストを導入することにしました
久保:
実際にチャットブーストを導入してみて効果はいかがでしたか
水田:
友達登録の時に体調のお悩みなどが解像度高くわかるようになり
ました
今後はタグ配信機能を使って個々のお悩みに役立つ情報を配信していく予定なんです
購買商品とか履歴に応じて個別でインタビューを依頼させていただくこともあります
久保:
なるほど、ブランディングの面でチャットブーストを活用するケースもあるんですね
水田:
そうですね、これからもどんどん活用していこうと思っております
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